スナップアップ投資顧問の銘柄評価
スナップアップ投資顧問の推奨株の評価です。自動車業界・自動車部品メーカー編。東証一部上場の三桜工業(三櫻工業)などの株価の値動きや創業史。部品業界の現状や課題もあわせて紹介します。
■ 三桜工業(2020年12月推奨)
業種 | 自動車部品メーカー |
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推奨時点の株価 (推奨日の始値) |
653円 (2020年12月1日) ※PER:23.88倍 |
推奨後の高値 | 885円 (2020年12月10日) ※PER:29.70倍 |
上昇倍率 | 1.3倍 |
現在の株価 | こちら→ |
市場 | 東証1部
(1961年10月、東証2部上場) |
ロゴ |
三桜工業(三櫻工業)とは
自動車用チューブの国内シェア4割
三桜(さんおう)工業(三櫻工業)は、自動車部品メーカーである。車用の各種チューブを主力としている。自動車用のチューブの国内シェアは4割を誇る。
具体的には、ブレーキチューブ、金属チューブ製品など分野において、日本を代表する優良企業として君臨している。このほかにも電機部品や設備の製造を手がける。
三桜工業がつくる部品は、車の運転にとって極めて重要である。車が「走る」「曲がる」「止まる」といった車の根幹を担っている。
三桜工業の製品の例
- ブレーキチューブ
- 金属チューブ製品
- 樹脂チューブ製品
- クイックコネクター
- シートベルト用のバックル及びショルダーアジャスター
- ブレーキ・燃料配管、エンジン用ブレージング製品
- 環境規制対策製品(フュエル・インジェクションレール)
特定の系列に属さない独立系
三桜工業は自動車メーカーの系列に属さない「独立系」の部品メーカーとして、確固たる地位を築いている。
日本の自動車部品メーカーは、特定の完成車メーカーと資本関係を持つ系列企業が多かった。もともと事業規模が小さく資金力に乏しかったためだ。
独自の販路
しかし、グローバル化が進んでいく中で、日系企業に頼るだけでは成長は難しい。新しい販路の開拓が課題となっている。この点、三桜工業は特定の国内メーカーだけに依存しない経営体質を維持している。
世界各国に製造拠点を備え、グローバルな納入体制を構築している。
工場の設備も自前でつくる
三桜工業の場合、工場の生産設備のほとんどは、自社で開発・製造している。このため、業界内での競争優位性を保ちやすいポジションにいる。
ドイツの部品メーカーを買収
2015年、三桜工業はドイツの中堅自動車部品メーカーであるガイガー・オートモーティブ社を買収した。プラスチック製品を手がける会社である。
軽量プラスチックで新製品
ガイガーは軽量化につながるプラ技術に強みを持つ。昨今の自動車業界では、燃費向上のために部品の軽量化が求められている。三桜工業は、ガイガー社の技術を生かした新製品の開発に積極的に取り組んでいる。
創業者(初代社長)・竹田儀一
戦前に創業
三桜工業は1939年に設立された。所在地は東京都港区。当初は「大宮航空工業」という社名だった。まずは飛行機の部品を作った。
竹田儀一(たけだ・ぎいち)氏(厚生大臣)
創業者は2人いる。1人は、政治家と実業家を兼ねていた竹田儀一氏だ。竹田氏は戦前と戦後にわたって国会議員を務めた。戦後の片山内閣で入閣。さらに、芦田均内閣では厚生大臣に就任した。
篠原幸之助(孝之助)氏
もう1人の創業者は篠原幸之助(孝之助)氏。
2人は対照的な性格だったという。竹田氏は政治家だけあって先見性があった。三桜工業を立ち上げた後、冷蔵庫のチューブを作ろうと提案した。
一方の篠原氏は物事を具体化する力がずばぬけていたという。篠原氏がいなければ物事は実現しなかった。竹田氏の鋭い発想力と、篠原氏の着実な実行力が、会社の両輪となった。
戦後は一時、いも焼酎の醸造元に
三桜工業は時代にあわせて主力製品を切り替えてきた。終戦直後は、工場があった茨城県の古河周辺がサツマイモ産地だったことから、いも焼酎の醸造元に転身した。このころ社名を「竹田産業」に変更している。
冷蔵庫用のチューブ
その後、冷蔵庫に使うチューブなどの機械部品製造を始めた。1952年に社名を現在の「三桜工業」の変えた。さらに、1956年小型モーターの製造を始めた。
こうした過程の中で、社員たちは「一つの製品の命は永久には続かない。常に十年先を見据え、行動することが必要」という企業哲学を学んだという。
1961年東証二部に上場
1961年10月、東証2部に上場した。1998年12月には、東証1部への昇格を果たしている。
篠原孝之助氏死去
篠原孝之助氏(しのはら・こうのすけ=元三桜工業社長・会長)1999年7月17日午後11時1分、急性心不全のため東京都中央区の病院で死去、84歳。葬儀・告別式は社葬として8月26日午後1時から東京都港区南青山2の33の20の青山葬儀所で。喪主は妻久枝(ひさえ)さん。
車部品への参入
最も大きな転機となったのは、1960年代の自動車分野への進出だ。
1963年、1人の社員がアメリカに研修に派遣された。創業者の一人、篠原幸之助氏の甥(おい)っ子の篠原健治氏である。当時30代半ば。技術課長をしていた。
アメリカの技術研修で
研修の目的は、冷蔵庫に使うチューブ部品の製造技術を習うことだった。研修の過程で、篠原氏はその技術が自動車のブレーキなどに使うチューブにも応用できることを知った。
帰国後、自動車向けチューブの開発へ
「これはチャンスだ」と考えた。当時、トヨタや日産など日本の自動車メーカーは、チューブをすべて輸入に頼っていた。この需要にこたえることができれば、三桜工業も大きな飛躍ができると判断した。篠原氏は帰国後、自ら責任者となって自動車チューブの開発に尽力した。
売上高が急成長
経営陣も自動車チューブに社運を賭けるという決断を下した。その結果、高品質のチューブ開発に成功。米国企業にもないメッキ技術も取り入れた。その後は日本国内の車の普及とともに、売上高も急成長した。
2代目・篠原健治
車用チューブの開発を率いた篠原健治氏は、1983年に社長に就任。創業者2人の後を継ぐことになった。
以来、社長を11年務めた。この間、当時まだ珍しかったコンピューターを積極的に導入した。社員の給与管理や工場の機械制御などにコンピューターを採用した。
台湾や中国に工場を建設
海外進出も進めた。1980年代から1990年代にかけ台湾や中国などに工場を建設した。「21世紀は間違いなくアジアの時代になる」というヨミがあった。
人材育成も強化した。社内の研修講座「三桜カレッジ」を開設し、社員が機械工学や英語などを自発的に学んだ。
1993年に本社を茨木・古河に移転
1993年に本社を東京から茨木県の古河に移転した。理由は、コンピューターや情報手段が進歩したことに加えて、社員がマイホームを持ちやすくするためだ。「家族が充実していて、初めていい仕事ができる」との考えがった。当時は単身赴任させないことを会社の原則としており、海外赴任も家族同伴が前提だった。
3代目・竹田陽三
1995年6月、竹田陽三(たけだ・ようぞう)氏が社長に就任した。篠原健治社長は会長になった。
プロフィール
竹田陽三氏は、創業者の一人である竹田儀一氏の親族だ。
慶応大学商学部卒。1971年(昭和46)に三桜工業に入社した。
1983年取締役、常務を経て1991年から専務を務めていた。社長就任当時46歳だった。
2012年6月、会長就任。引き続きCEOを務めた。
竹田陽三氏の母親は田中なみさん。田中なみさんは、田中新弥・鐘淵化学工業常務の母でもあった。
4代目・篠原利幸
篠原利幸(しのはら・としゆき)氏のプロフィール・経歴
1956年生まれ。
東京都出身。
1980年、早稲田大学政経学部卒業、日産自動車入社。
2000年、三桜工業入社。
2002年、取締役
2010年、副社長
2012年6月、社長就任
2017年6月、副会長
2018年6月、退任
5代目・竹田玄哉
竹田玄哉(たけだ・げんや)氏
1978年6月24日生まれ。
東京都出身。
2008年、米ノースウエスタン大院修了。
2009年2月、三桜工業に入社。
2012年取締役、2016年副社長を経て、2017年社長就任。
自動車部品業界の現状と課題
自動車部品メーカーの経営環境は、大きな転換期を迎えています。次世代の車技術が急速に進展する中、完成車メーカーは部品メーカー(サプライヤー)に対して、先進技術の開発要求を高めています。
開発コスト増大
自動車業界には「電気自動車化」「自動運転」「カーシェアリング」など新しい技術の波が押し寄せています。これにより、各自動車メーカーは、次世代技術の開発コストの膨張に悩まされています。部品調達コストの削減も、切迫した課題となっています。
完成車メーカーとADASを共同開発
なかでもコネクテッド、自動運転、電動化などの分野では、異業種参入組や海外勢との技術競争も激化しています。国内の自動車業界内での争いの枠を大きくはみ出しています。このうち、ADAS(先進運転支援システム)、5G(次世代移動通信システム)では、完成車メーカーと部品メーカーが共同開発に取り組むケースが増えています。
運命共同体のサプライヤー
こうしたなか、自動車部品メーカーは、単なる「仕入れ先」に対する要求ではなく、「運命共同体としてのパートナーシップ」を築けるサプライヤーかどうかが試されています。実際、部品メーカーに対しては、部品開発に止まらず、製造から販売までのシステム全体についての提案を求められる場面が増えています。
パーツメーカー同士の提携
こうした流れを受けて、部品業界では、パーツメーカー同士の提携によって完成車メーカーへの提案力向上を図るなど、対応を加速させています。
トヨタ系は自動運転と電動化で合弁会社
トヨタ自動車系列では、部品メーカー各社がグループ内協業の姿勢を鮮明にしています。自動運転と電動化で合弁会社設立を明らかにするなど、競争力強化に向けて、従来の枠を超えた動きを加速させています。
ホンダ系ではCAEデータを共有
一方、ホンダ系列では、電動車対応技術の構築を目的に、一部の車体骨格部品メーカーと足回り部品メーカーが、2018年から協業に取り組んでいます。CAE(コンピューター支援設計)データを共有することでノウハウを融合。足回り部品に衝突安全マネジメント性能を新たに付加するなど、電動車向け新骨格の開発・提案を進めています。
鉄鋼メーカーと組んで軽量化
機構部品メーカーの中には、電動車領域をビジネスチャンスと見込む会社も増えています。鉄鋼メーカーなど異業種と組むことで最先端の軽量化技術開発に取り組む動きも出ています。自社のコア技術を生かして、モーター事業参入を目指すエンジン部品メーカーや足回り部品メーカーもあります。
世の中の「走行性能軽視」に懸念も
ただ、部品業界には懸念の声もあります。電動化やコネクテッド化で「車の走行性能」「乗り心地」「ドライバビリティ」「安定感」などがあまり重視されなくなれば、自社部品の差別化を図りにくくなるためです。
AI生産は不可避
いずれにせよ、部品メーカーとしては、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を駆使し、生産性を向上させることが不可避になっています。